あんの感想置き場

鉄は熱いうちに打て

『客 the guest』感想 宝石箱にあの海ごと詰めたい

先に書いておきます。長いです。

 

客 the guest、通称「客ザゲ」

東洋シャーマニズムと西洋エクソシズムがテーマの悪霊退治系スリラー作品。監督はキム・ホンソン。私の韓ドラ漬けはここから始まった。

全16話だけど確か3日くらいで見尽くしたと思う。本国の円盤ボックスも原作も日本字幕の円盤も買った。貢ぎすぎた感はあるけどまだロザリオに手を出していないだけ耐えていると思う。(ロザリオを買ったらいよいよ海に入水してしまいそうなので…)

本作は何を隠そう悪魔祓いをする神父と霊媒師家系のタクシー運転手とこの二人より2歳年上の強姉刑事が共に人間社会を救うお仕事ドラマであり、悪霊の親玉がギリギリまで分からないミステリーであり、人々が次々と悪霊に憑依されてしまうホラーでもあり、友情と愛情が"東の海"でビッグバンを起こしたクソでか感情ドラマ。

韓国での放送は2018年秋なので、公式サイトのメイキング画像をスマホに保存したらdeleと客ザゲがごっちゃになってしまい、今私のカメラロールは2018年が大変なことになっています。

最近色んな韓ドラに手をつけ始めたんですが、客ザゲは韓ドラを初めて見るには結構いいのかもしれないなと思うようになりました。本当に先入観だけで申し訳なかったんですが、今までは韓ドラのヒット作品に王子様が存在する恋愛ドラマというイメージしかなくて(後から気づいたけどこれは韓ドラを日本に輸入した際にポスターデザインをピンクいっぱいにした日本のレーベルが悪い)、客ザゲを見て映像の美しさに衝撃を受けました……元々探偵&警察スリラーが好きだったので本当に楽しかった。

主演は俳優のキム・ドンウク、キム・ジェウク、チョン・ウンチェ。

ドンウクとジェウクは2007年の『コーヒープリンス1号店』に出演して以来11年ぶりの共演/競演らしく、11年という期間を感じさせないくらい距離が近くて「何?????」って感じです。「2ウク」で検索したらびっくりする写真がいっぱい出てくる。待っていれば菅田将暉山田孝之も再共演/競演することがあるのかもしれないと思うとオタクはそう易々としねないなと思いますね…(余談)

キム・ドンウクが演じるユン・ファピョン(31)は、霊媒師一家の霊感あり一人息子。幼少期の出来事がきっかけで、とある神父を探すためにタクシー運転手をしています。実家にはじいちゃんだけが住んでいて、たまにファピョンが帰るとじいちゃんはファピョンを心配しつつもめちゃくちゃ可愛がる。ファピョンにはもうひとり頼れる人がいて、それがユクグァンという霊媒師なんですが、ファピョンが彼を「兄貴」と慕う姿は野良みたいでめっかわ…メイとトトロ感もある推せるコンビ。

キム・ジェウクが演じるチェ・ユン(31)は悪魔祓いができる神父様(司祭)。とりあえず「マテオ」という名前だけでも覚えていただけると嬉しいです。ファピョンも無茶をするけどユンもかなり無茶をするので最高。あまり友達を作りたくなさそうでツンとしていますが、一度心を開いたらとことん一途。このドラマはマテオがチェ・ユンになる成長ドラマでもあるしね?退魔儀式をする所作が美しいのでそれだけでも見応えがある。

チョン・ウンチェが演じるカン・ギルヨン(33)はめちゃくちゃ動ける刑事。犯人を捕まえようと調べていたら、毎回なぜか現場に先回りしているファピョンの存在に気づき職質します。事件はほぼ悪霊の仕業なのでファピョンの霊感が事件解決の大きな鍵になるんですが、霊感は物的証拠にはならないので、刑事としてはもどかしいんですよね。しかもギルヨンには捕まえなければならない未解決事件の犯人がいて、これがどうなるのかもこのドラマの見どころです。

3人とも幼少期の出来事がきっかけで今の仕事についているし、向き合わなければならない傷があって、3人の人生がどんどん混ざっていくのがたまらないんですよ。運命共同体

3人を支えてる脇役の大人たちも本当に良い。ファピョンには霊媒師のユクグァン兄貴、チェ・ユンにはハン神父とヤン神父、カン・ギルヨンには同僚のコ刑事がいて、個人的にはユクグァンとヤン神父とコ刑事が居酒屋で「うちの子がさ〜」みたいな会話をしてほしさもあった。そんな世界線は一切ないが…

悪霊に憑依される人の演技もリアルで演技が上手い。格が違うというか、ベクトルがぶっ飛んでる。悪霊に取り憑かれた人は自ら目を突き刺したり水を吐き出したりするんだけど、日本では絶対できないであろう描写にビビる。悪霊というファンタジー的な要素を人間の弱い心と結びつけることで現実感があって、物語に説得力も生まれていたのが凄いなと思いました。

サントラのメインテーマ「Somewhere」も大好きです。これは本当にやばい。この曲で何回泣いたことか。魂が海に漂うようなメロディーとファピョン自身の心境が投影された歌詞。「I wait for death」「Please take my hand」って言うんですよ!?全ての運命を一人で背負おうとするファピョンへの切なさと愛しさで情緒がやばい。私がマテオだったら真っ先にファピョンを抱いていたのでマテオがジェウクで本当に良かった………………え?

韓ドラを完走するのはフルマラソンくらい大変なんですが、5話で一旦ヘキに刺さるシーンに突入するので苦にはならないと思います。正直5話からもうノンストップだった。13話もかなり面白かったし、最終回(16話)なんて「これでようやく大団円で終われる」と思ったらまだ1時間くらい残っていて二度見した。

3人の運命と業。互いが互いの傷にも愛にもなる。最終回のファピョンの台詞が尊すぎて感情が爆発した。こんなん性癖やんか。やめてや…何食べたらホンソン監督はこんな物語が撮れるんですか?こちら側の趣味をお持ち…か…?なんか、バディものを意識させずにバディにさせる術でもあるのかと思ってしまう。大々的に「こことここがコンビで相棒で仲が良くて出来てますよ!」と言ってないのに「こことここは出来たんだよ」と厳かにぶつけられた感じ…分かります?

こんなに地獄みたいな絶望の夜が、果てしなく美しくて儚い。

deleの次に好きなドラマと言っても過言ではないです。テーマが全部好きだった。見終わった後は居ても立っても居られなくて、ファピョンの好物ソジュ(焼酎)を買いました。美味しかった。