あんの感想置き場

鉄は熱いうちに打て

今年の夏をAD-LIVEに捧げる

AD-LIVEとは?

AD-LIVE(読みはそのまま「アドリブ」)。キャラも台詞も何も決められていない中、全てアドリブで行われる90分間の即興劇。演劇の稽古として実際に存在している「エチュード」という練習方法を、声優の鈴村健一さんがエンタメへ昇華させ続けている作品。決められているのは大まかなシチュエーションといくつかの出来事のみ。

【例え】

シチュエーション→○○会社のオフィス

登場人物→2人(サポート係の脇役は何人かいる)

出来事→電話が鳴る、社長が入ってくる、電気が切れる etc...

出演者は事前に演出チームにキャラ設定ノートを提出してはいるけれど、共演者がどんな役なのかは舞台に上がってから知る。予め決められたポイントを通りながら時間配分を考えつつ、出演者は好きなタイミングでバッグから「アドリブワード」を引き、その出たアドリブワードを台詞に混ぜながら、自分の役をこなし、相手と掛け合いもしなければならない…しかも音楽も生の即興演奏。舞台袖では小道具スタッフがその場で本編に合わせて小道具を作り始める。

まあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜狂った作品である。

当然最後の台詞も決まっていないので、出口に迷ったとしても全員で出口を探さなきゃいけない。そしてその日の公演を終える"暗転"を担っているのが演出チームの川尻恵太さん。

先日の川尻さんのラジオで聞いた話では、TEAM NACSが大活躍している北海道で小さな劇団を作って当時は活動しており、ラーメンズの札幌公演を毎回手伝っていたご縁で小林さんとバカリズム大喜利ライブでお題作成を担当することになり上京したらしい。

え〜〜〜〜〜〜めっちゃぽいな〜〜〜〜!?

総合プロデューサーの鈴村さんとこの川尻さんが演出チームとして入り、1年かけてその年のシチュエーションを構築してくれるからこそ、本番当日に出演者がアドリブを繰り広げても事故らないシステムになっている。これは言い切る。事故らないシステムなんですよこれ。だから全編アドリブなのに安心して見ていられる。

これがAD-LIVE……

津田健次郎出演回の感想

感想を書く前に、なぜ私がAD-LIVEにハマったのかも書いておきます。

まず私は現在進行形で津田健次郎チャンヒョクにハマっています。前者のきっかけは尾形百之助で後者のきっかけはドラマ『ボイス』です。供給量に対して自分の見たいものが追いつかなくなっている状態だし、2人の画像を並べたら分かりやすく好みが偏っており笑えてきます。

ある日、フォロワーさんから津田健次郎のDVDあったけどいる?と連絡が来ました。写真を見て「AD-LIVEだぁ!!!」と思いました。名前だけは知っている円盤。運命じゃ〜ん!買います!ということでお迎えさせていただきました。円盤は2017年公演。これでAD-LIVEというコンテンツに惚れた私は、津田健次郎出演回を全て見ることになります。

ということで、感想を読んでやってください。

2015年昼公演 祝!初AD-LIVE

櫻井孝宏津田健次郎鈴村健一

舞台は「トモダチファクトリー」というお店。友達がほしい人同士をマッチングし、2人が一緒にゲームをすることで仲良くなってもらおうという企画を作っている。

参加者は本田圭一(櫻井)と山本太(津田)。従業員は鈴村さん。

いかにもカツアゲしてそうな強面な本田さんと拗らせポンコツな山本さんが最終的に命を懸けたゲームに参加することになる。性格的に普通に過ごしていれば絶対に交わらないであろう2人が徐々に仲良くなっていく。お互いに秘密を明かしつつ、従業員の鈴村さんに翻弄されながら、2人で協力してゲームをやり切る姿が良かった。一番スタンダードな回だった気がする。初手にピッタリな公演。

 

2015年夜公演 腹が捩れるドコメディ

櫻井孝宏津田健次郎鈴村健一 (同シチュ)

面白すぎて腹痛い。しょうもないことに大人が真剣に全力で立ち向かっている。

参加者は前田三郎(櫻井)と真田悟(津田)。

櫻井さんが71歳のおじいちゃんとして出てくる時点で面白くないわけがないやんか。津田さんは眼鏡・スーツ・七三分け・神経質な44歳マザコン男を演じているんだけど、ゲームが進むにつれて表情が柔らかくなる。最終的には髪がボサボサだし汗だくでソファにだらんと寝そべり、何ならちょっとえろい…

前田おじいちゃんのボケ回収にくったくたになる津田さんが見られる。しかも背中に羽根が生えるスーツの真田さんがシュールすぎて己の腹筋がどっか行く。

気が狂うほど面白い。どうでもいい時に見てほしい。

 

2017年昼公演 兄の巨大感情

津田健次郎高垣彩陽

私のAD-LIVE初見はこれ。

これ本当に即興〜〜〜〜〜〜〜〜〜????

どこまで即興〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜????

と混乱するほど、ストーリーとしては綺麗に仕上がっている。この年は初めて全公演で異なるシチュエーションが用意されていたらしいです。昼と夜ですらシチュエーションが違う。演出の労力どうかしてる。凄すぎ。

舞台は小宮樹里(高垣)の家!樹里の誕生日に兄の小宮俊治(津田)と父がやってきて誕生日会をする。

本編中に3回初出し情報があり、舞台のスクリーンに映し出される演出。当然この情報を演者は観客と同じタイミングで知る。かつ、演者自身にも本編中に明かさなきゃいけない秘密を持っていて、この秘密をどのタイミングで出すのかが肝になる公演。

お兄ちゃんが妹へ明かした秘密が巨大感情すぎて震えた。お兄ちゃん…お兄ちゃん…………

兄妹の愛が溢れるハートフル回です。

 

2017年夜公演 衝撃の出落ち担当

津田健次郎高垣彩陽

まずですよ…?私はフォロワーさんから届いたこの公演の円盤を初めて手に取った時にカバーの裏表紙を見て発狂しました。

津田健次郎ゴスロリ女装をしている。

なんで?どうして?どういう状況?

津田健次郎だぜ?まあ津田健次郎ならやるか…そうだな…うん…津田健次郎だもんな…(謎の納得)

舞台は一岡モミジ(高垣)という漫画家の家。

アシスタントの二藤じゅんいち(津田)と共に二人三脚で連載漫画を描いている。が、2人には秘密があって──

こちらもハートフル回。AD-LIVE特有のドタバタもありつつ、オチまで上手くまとまっている気がします。

そんなことより二藤じゅんいちの女装なんだわ……!!!!!!可愛い。ありえん可愛い。動きが本当に可愛い。「愛おしい命」って感じ。

津田健次郎が可愛すぎて困惑。

 

2018年昼公演 鳥肌が立つ傑作

津田健次郎浅沼晋太郎

2017年公演で完全にAD-LIVEに心を鷲掴みにされた私は、片っ端から過去作を見ていく中で一番鳥肌が立つ回に出会いました。

これは恐らくAD-LIVE史上伝説の回なのでは。ハードルを上げすぎたかもしれないけどそれくらいおすすめできる回。自信を持って配り歩ける。

舞台は「ハッピーミレニアム記念日」当日のとある洋館。ハッピーミレニアムとは、惑星「ダーウィン」の通称。生物が移住できる第二の地球として発見されたこの惑星の命名日が、ハッピーミレニアム記念日らしい。なるほどわからん……と思ったら、これ小説の中の話!!舞台に立つキャラクター自体が小説の中で生きている設定のSFモノ!!!

その記念日に洋館に現れた2人は、謎のおじさん:オガワ(津田)と謎の男の子:中井戸くん(浅沼)。

これね…何も知らずに見て津田さんの丁寧な伏線の回収に度肝抜かれたんですよ…共演者の浅沼くんは元々演出チームとしてAD-LIVEに参加していたので、彼は彼なりに緻密な設定を持ってこられるアイデアマン。その浅沼くんが「完敗です」と言ったほど、津田さんの持ってきた設定がヤバイ。伏線回収ものなんだけど、そもそも即興劇で可能なの?というハードルがあって、誰もこの舞台で伏線回収をするなんて思わずに観ているから、津田さんの思い描くゴールに近づくにつれて鳥肌が止まらなくなる。答え合わせをしていくゾクゾク感。あれもあれも…あの時のあれ!?という、AD-LIVEの性質上、同じ公演は二度とできないからこその奇跡。一つでも伏線を回収し忘れたら矛盾が生じて成立しないのに、それを覚悟でやってのける津田健次郎よ…

後日談で、自分の計画が違う方向へ行ったら全部捨てるつもりだったと津田さんが話しているのを知った時は、静かに泣いた。

 

2018年夜公演 エンタメの真髄

津田健次郎浅沼晋太郎 (同シチュ)

「エンタメとは何か」をAD-LIVEを通して語りかけてくる神回。

何だろうな…この津田浅沼ペアは天才と天才が天才的な駆け引きをしながら話を進めていくので、天才としか言いようがない。

登場人物はパーティーに呼ばれたマジシャンの伊達龍太(浅沼)と元気でポジティブな高校生クロダタロウ(津田)。

マジシャンの伊達さんがエンターテイメントに向き合ってタロウに伝える言葉がめちゃくちゃ良い。伊達さんの奥にある浅沼くん自身の想いが滲んでいる気がして、このシーンを見て私は2018年の円盤を買うと決めた。公演自体は2018年だけど、今にも当てはまる台詞だったと思う。ハートフルになるのかと思いきや、これも後半にめちゃくちゃ凄いことになる。闇堕ち・人外・ブロマンス福袋。

 

2020年昼公演 必ず最後に愛は勝つとは限らない

津田健次郎西山宏太朗

初の無観客配信…!演出チーム曰く、有観客でもできないことはなかったらしいけど、無観客でしかできないことに挑戦したかったらしい。なのでカメラアングルや場面転換中の映像へのこだわりがめちゃくちゃ入っている。

舞台は豪華客船での謎解きゲーム。ペアになった参加者が実際に謎解きゲームに挑戦する。謎解き問題の提供はリアル脱出ゲームでお馴染みのSCRAPです。ガチの謎解きやん。そんな客船がゲーム開始早々に沈没し始める…!!

参加者は平川源平(津田)と吉瀬涼子(西山)。避難しそびれて取り残された2人は何とか船から脱出しようと、簡易ボートを得るために謎解きをすることになります。2人は無事に脱出できるのか!?という話。

最後、平川源平を悲劇が襲います。AD-LIVEならではの"こんなはずじゃなかった"ルートを清々しく通っていくのが見どころ。ラブストーリーになりそうでならない、ラブストーリーに行きたいvsラブストーリーに行きたくないが絶妙なバランスで噛み合い、最後はBIG LOVE…(?)

 

2020年夜公演 期待を裏切らない健次郎

津田健次郎西山宏太朗 (同シチュ)

謎解き参加者は黒須(津田)と、かにパン(西山)。

西山くんが蟹の被り物で津田さんの前に登場し、これは蟹なのか?それとも人なのか?黒い服は存在していないものとして扱うのか?と混乱させる出落ち回。

対する津田さんはほぼ私服。何の捻りもない、多分本人はそのままコンビニでも行くつもりのフード付きの黒いロングパーカーに黒いスキニーパンツに黒いブーツ。もう真っ黒。通常運転の津田健次郎。ただ一つ特徴を挙げるなら「顔色が悪い」。

この凸凹ペアが生存ルートを目指して謎解きに挑戦していくんですが、もう少しで簡易ボートが得られる…!という時に、津田さんがようやく化けの皮を剥がす。例えば、ババ抜きをしていて、西山くんが津田さんから手持ちのトランプを引いたらジョーカーだったみたいな気持ち。そういう美味しい〜〜〜ところをしっかり持っていく津田さんの芝居にかなり嫉妬している自分がいた。ずるいだろあれは!?!?!?

津田オタクを根絶やしにする勢い。好きだばーか。

 

2022年昼公演 '16と'18のハイブリッド

津田健次郎畠中祐、和田雅成

すっかりAD-LIVEに狂った私は、AD-LIVEの公式垢を覗きにいき、今年の公演チケがまだ買えるということを知りました。しかもこのメンツ見てください。そう、私が散々狂わされた尾形百之助と花沢勇作の声帯主です。想定外すぎてキャスト二度見したわ。そして私は両公演のチケを一般でもぎ取った。超絶ラッキー☆

ということで、私は8月27日にAD-LIVEデビューを果たしました。

 

舞台はテレビ局の一室。特番生放送中、企画を担当していたスタッフの向山が逃げたため重要なVTRを紛失。何とか生放送を繋ぎ止めるべく3人が奮闘する。

登場人物は兄貴想いのディレクター五峰照夫(畠中)、テレビ局に迷い込んだ臨床心理士ヨシダタカシ(津田)、ロケをしていたところを急遽連れて来られた新大久保No. 1ホストのハイランド(和田)。

前日の鈴村さんのスペーストークで、この3人は構築型であり、どうやら津田さんが信じられないほど難しいことをやろうとしていると聞いていたので、シンプルなスーツで出た時に「あ、進○ゼミで見たこれから何か仕掛ける津田健次郎だ!」と興奮した。(生の津田さんマジで顔が良かったです。)

内容はサブタイ通り、2016年と2018年公演の設定の良いとこ取りをしたハイブリッド公演。

これね……本当に難しかったと思う!

というのも、2018年は演者が2人だったから、相手の設定だけを気にすればよかったけど、今回は自分以外に設定を持ち込んでいるのが2人いるので、より各々の設定が渋滞しやすい仕組みになっている。その中で2人を自分の世界に巻き込んでいく引力が、津田さんは凄かった。落ちてたパーツをじわじわとはめていって、いつの間にか津田健次郎ワールドの中に全員が居た感覚。

そして前半ずっとコメディだったのが、徐々にハートフル&シリアス要素を持ち始めて、津田さんの最後の台詞で暗転。99%ハピエンで終わると思ったのに、津田健次郎は残りの1%のミステリーで終わらせた。

でもこれ、津田さんは全く想定していなくて、偶然なんですよ…!

今回の本編終了の合図は、最後に電話が回って来た人の一言からの暗転。これは決まっている。本編後の舞台挨拶で津田さんが、最後の台詞を自分が言うのは「想定外だった」と言っていて、咄嗟に考えて出た台詞があれって天才か?と思った。

ちなみに電話が自分に回って来た時の津田さんの気持ちが「じゃあ…俺が…やべえのか…」です。この意味は本編を見て出来れば探してほしい。私は鳥肌が立った。その頭の回転の速さ何やねん。怖い。

正直、前日に鈴村さんが「津田さんが凄い」とめちゃくちゃハードルを上げてしまったので、超えられなかったらどうするんよ!!!と不安でもあったんですが、初日ということもあり観客はベースとなる設定を知らないので、どこが出演者のオリジナルで、どこがベースのシチュエーションなのか全く見分けがつかなかった。それくらい3人の持ち込み設定が綺麗にくっついた。

ネタバレになるので伏せますが、2016年のシチュを、2016年に出ていなかった津田さんが今回やっていたので、2016年のあれじゃん!!と分かった時はめちゃくちゃ嬉しかった。

大好きな2018年公演を超える気概を見た気がしたし、暗転する瞬間のホールの静寂を思い出しただけで津田健次郎すげえええええ(涙)となる。

あの静寂は呆然とか放心状態とかそういう感じだった。引き込まれて皆戻って来れてないみたいな…VIVA!健次郎ワールド…………

 

2022年夜公演 AD-LIVEの洗礼

津田健次郎畠中祐、和田雅成 (同シチュ)

初日であれを見せたら、夜はどうするんですか…?とドキドキしつつ蓋を開けたら過去イチカオス出口迷子回。

すげえよ、本当にさっきやってた同じキャストかよ。キャラと立ち位置を変えただけでここまで変わるの天才か?

笑いが止まらん。多分一生分笑った。2015年夜公演と良い勝負してる。

登場人物は競馬好きな45歳ディレクターで借金がヤバイ君島一発(津田)、お父さんを探したい迷子のアユムくん11歳(和田)、何やら事情がありげな石の神(畠中)。

まず、畠中くんが人間ではない出落ちキャラの時点で「先行き不透明〜〜〜〜〜〜〜wwwww」となる。90分間の個性と個性のぶつかり相撲が開幕。

でも一番面白いのは、畠中くんがどっからどう見てもボケ要素の見た目なのに出落ちであるため、性格上、登場以外はほぼツッコミ役。逆にノープランかつ何でも吸収役のつもりで出てきた津田さんがノープランゆえの自由さで伸び伸びと動いた結果天然ボケばぶちゃんになり、和田くんは和田くんで己の設定を最後まで貫きたい個性強キャラなので畠中くんの世界観との擦り合わせに混乱を呼びまくり混沌。

AD-LIVEの洗礼を浴びたーー!!!!って感じ。

そんな中で一番感動したのは、和田くんの最後のオチ台詞を聞いて、暗転の瞬間に咄嗟に取った津田さんと畠中くんの行動です。そりゃそう。これどうやって終わらせるんだよ!と何度も思ったもん。

ちなみに津田さんは持っていた石を手を滑らせて落とし、畠中くんは猛ダッシュで舞台袖へ消えました。配信ではここがカメラに抜かれていなかったので…!!円盤化の際は和田くんの最後の台詞と合わせて映るようにしてほしい…どうか映っててくれ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

番外編 『ドキュメンターテイメント AD-LIVE』感想

最後にドキュメンターテイメントの感想を少し。

AD-LIVEの映画。監督・脚本が津田さん。

「ドキュメンターテイメント」は津田さんが考えた造語。フィクションの中にノンフィクションを混ぜることで、どこが作り物でどこが事実なのかというAD-LIVEらしさを表現している。

総合プロデューサーである鈴村さんが主人公で、AD-LIVE制作に密着したドキュメント……と思わせておいてしっかりプロットを用意し、最後は超ご機嫌ミュージカルで締め!☆

鈴村さんにAD-LIVEを作り続ける理由を問いながらミュージカルに向かわせる遊び心が好き。

ミュージカルが始まった瞬間めっちゃ笑ったんだけど、曲が名曲すぎて終わる頃には半泣きだった。私はAD-LIVEを見ていただけなのに、何か物凄く刺さるミュージカル曲に出会ってしまって動揺と興奮が凄い。

作り物だからこそ、主人公である鈴村さんの発する言葉に嘘があってはいけないからと、細かく鈴村さんに質問をして言葉を擦り合わせていった津田さんが尊くて涙が出た。